DDLのカフェでレオンとわかれたエイジは、その足で龍泉寺教授のオフィスにむかった。
「――おはよう。今日は予定がおしていてね……15分で」
遅いランチを口にしながら、龍泉寺は作業しつつ応対した。デジモンの解析が行われている。
デジモンを解析、分類する生物学。
デジモンをAIツールとして利用、応用するシステム工学。
デジモンをふくむデジタルワールド全体をとらえる環境学、人類への影響を検証する社会学。
いまでは多岐にわたるデジタルワールド研究だが、龍泉寺は常にフロンティアとして精力的に活動を続けている。
龍泉寺の研究は、デジタルワールドそのものに挑み続けること。
観測、採取――すべての学問の礎だ。
「お忙しいところ、すいません」
エイジは恐縮してみせた。
「いや、このあと教え子がくることになっているんだ」
「教え子……?」
「昔のね」
ということはレオンではないのだろう。エイジはちょっとホッとした。
「SoCの……X国データサーバでのいきさつは報告書のとおりです」
「やはり、ねらいは国家機密級デジモン・ムゲンドラモンだったか。X国はサイバー戦争能力を喪失、しかしムゲンドラモンは破壊、SoCは目的を果たせなかった。作戦としては失敗だね」
龍泉寺が評価した。
「リーダー・タルタロスは機密級デジモン……究極体を収集しています。目的はわかりませんけど、ただのコレクターとも思えません」
「だろうね」
「一時、現場で行動不能になった幹部のマーヴィンは回復しました。マインドリンクのリミットってヤバいですね……間近で見て、やっと実感わいたっていうか」
「どんな有能な人間でも、時間に追われるとミスをする。不測のトラブルが起きたときなどは、とくに……私でもね」
龍泉寺は、そこでエイジを見た。
「そう! あせるっていうか、信じられないことで判断ミスるっていうか……」
「将棋の名人でも1分将棋になればミスをする。マインドリンクの持続時間というのは、戦闘においては、デジモン自体のスペックとおなじかそれ以上に重要になる。きみとルガモンが、ハッカーのデジモンにやられなかったのは、時間がきみたちに味方したからだ」
「ふつうに戦ってたら、負けてたみたいな言い方だな」
ルガモンは、そのことを話すと機嫌がわるい。負けず嫌いなやつだ。
「ふむ……ルガモンはゴキゲンななめかな」
「つぎは……勝つ! あの静電気野郎め!」
「そのためには進化しなければね。まずは完全体だ」
龍泉寺が言った。
「完全体……!」
いったいルガモン……ルガルモンは、どんな完全体デジモンに進化するのだろう。
「教授……ルガモンって、どんな完全体に進化するんでしょうか?」
「どのようになろうと、デジモンの進化には正解も不正解もないよ。この地球にいるすべての生物が、そうであるようにね」
みな自分という〝種〟の可能性を、この世界で試しているのだと。
「おいエイジ……! とにかく完全体に進化だ!」
「おう!」
負けず嫌いのルガモンとエイジは、たがいに見あった。
「――ムゲンドラモンについても貴重なデータが得られた。人類史上最悪ともいわれたテロリストデジモン……できれば、どんなカタチであっても捕獲したかったが」
「ハッカーにじゃまされました」
「ふむ」
「あの……」
「知っているよ。レオン・アレクサンダー……私の教え子がハッカー・ジャッジだということは」
龍泉寺はモニタに、あのカヅチモンの姿を映した。
それを聞いてエイジは……ほっとした。
「なんだ教授、知ってたのか……おれ、なんて言いだせばいいかなって、考えすぎて頭がこんがらがってて。さっきまでレオっち……レオンと、ここのカフェで会ってました」
「そのようだね」
「てか、もしかしておれ、この仕事クビになったりしないですよね……?」
「なぜだね」
「レオンは、おれがクラッカーやってること、快く思っていないので……」
「レオンくんがどのように思うかは、私の、エイジくんへの評価には関係しない。今後、影響することもない」
龍泉寺がボスなのだ。
「ですよね! よかった……」
エイジは安堵の息をついた。
ほんとうに心から安心したのだ。昔の……小学校のときの人間関係で、いまの仕事を失うとかバカげている。
「それはさておき……きみとレオンくんがねぇ。小学生のころ、私が彼に預けたデジモンドックとデジモンを、きみにだけは見せたことがあったとか。縁はあったわけだ」
「はい。なんか、うれしいです」
「そうだね」
レオンを通じて、エイジはずっと前から龍泉寺とつながっていたのだ。
「ええと……これ、告げ口みたいで嫌なんですけど。あいつ、クラッカーのおれが龍泉寺教授のところに出入りしてるの、快く思ってません。教授の名前に傷がつくからかな」
「彼は……ええと、なんというのだろう」
龍泉寺は言いよどみ、指を宙で泳がせる。
「――あいつ……まっすぐなんです。それがいいところで、昔から変わらないんだけど」
「まっすぐ……なるほど、彼のなかには独特の判断基準があるね。彼は、それを〝正義〟と信じている」
「ガキのころは、そういうの振りまわすとツブされるでしょ? いいコぶるなって。でも、あいつは折れなかった」
「大人になったいま……レオンくんは正義を貫きとおすチカラを得た。リアルでも、ネットワークでも」
まわりがうらやむエリート大学生となり、AE社の専属ハッカー、究極体デジモンを使うほどに成長した。
同年代で比べれば完全無欠レベルだ。
「おれが教授の依頼でSoCの調査をしていることは、もちろんレオンには言っていません。でも、あいつはもう気づいていると思います」
「ふむ」
「それで……」
「ああ、わかった! エイジくんは、レオンくんに仕事のジャマをされやしないかと心配なんだね。なにしろ私の教え子だから、始末するわけにもいかず、扱いに困ると。なるほど、確かに」
龍泉寺はいろいろ合点がいったようだ。
「いや、始末って……ただあのようすだと、スパイ活動をSoCにリークされかねないので」
ハッカーの立場で考えれば、SoCの内部でイザコザが起きるのは歓迎のはずだ。
「ハッカー・ジャッジのことは、こちらでも考えよう。きみは引き続き……」
と、オフィスの内線が鳴った。
つぎの来客がもう来たようだ。
エイジは帰るぞ、といってホロライズを解除、ルガモンをデジモンリンカーに格納した。
「じゃあ失礼しま……あ! 言いわすれた。リーダー・タルタロスとコンタクトしました」
帰りがけにエイジが言うと、龍泉寺はメガネのブリッジの位置をなおした。
「タルタロスは……元気そうだったかい」
「ボイチャで声、聞いただけですけど。いろいろうわさを聞きました。タルタロスは、自分が指揮した作戦では、仲間をぜったいDMIAにしないとか。なんか黒いアグモン探してたり……」
オフィスのガラス扉の外に、来客が姿を見せる。
龍泉寺がそちらを手招きした。
昔の教え子と言っていたが……。
入室した――背のたかい女性を視界に入れたとき、エイジはぞわっという寒気に襲われた。
「ありがとうございました」
顔をふせて足早にオフィスをあとにする
女性は、擦れ違ったエイジを一瞥しただけで、さほど意に介したようすはなかった。
おはようございます、というあいさつが聞こえた。
龍泉寺のオフィスをあとに、エイジは1階のロビーにむかった。
ゲートをくぐって受付にむかう。
「あ、エイジさん。おつかれさまです。先ほどはどうも」
受付の初音がこっちを見た。
「おい、今晩ヒマか? もんじゃ食いにいこーぜ」
ルガモンが勝手にデジモンリンカーから声を上げた。
「おい……! ゲートの外ではおとなしくしてろって」
エイジはあわてた。
まわりの来客がチラチラこちらを見ていた。エイジがナンパしたように思われたはずだ。
「え……デジモンにさそわれちゃった!」
初音はくすくす笑っている。
「エイジのかわりに言ってやってんだよ。子分思いだろ、おれ」
「このバカデジモン……! 引っこんでろ」
エイジはデジモンリンカーの音量を強制OFFにした。
「――あのさ、初音っち」話を強引に変える。「いま、龍泉寺教授のところに来ている客……あれ、警察の人だな」
見ればわかった。制服を着ていたから。
「うん。警視庁の……デジモン関係の人」
初音は小声で言った。
「やっぱりか」
とするとデジ対かもしれない。クラッカーの本能がそうささやいた。
「龍泉寺教授は警察にも顔が利くから……。あの女性は、たまにラボにくるね」
「教授の教え子らしい」
「教え子……? そうなんだ」
「名前とか、わかる?」
エイジはいっそう小声になってたずねた。
「警視庁の徐月鈴さん。背が高くて、きれーな人だよね……エイジさん、もしかして年上好き?」
中華系の名前だが……警察官ということは日本人なのだろう。
エイジはパスを返却した。
「ところで初音っち……もんじゃ、どうする?」
エイジはダメもとで言ってみた。
初音は、ちょっと考えたあと、
「あのね、実は……」
「?」
「エイジくんならいいかな……仕事してるし、ぜんぜん大人みたいだし。折りいって相談したいことがあるんだ。これ、私のGriMMのアドレス」
――初音モカ
エイジのスマホに通信が届いた。初音の連絡先だ。
エイジはどきどきした。
「えと、相談って……?」
「あとでメッセージ入れるね。エイジくんにしか話せないことなんだ……」
レオン・アレクサンダーが電臨区のタワーマンションに帰宅すると、部屋の照明が自動でついて、BGMが静かに流れはじめた。
「――エサにしますか、それともお風呂?」
「パルスモン? なんだそれは」
ホロライズして現れたパルスモンの言動を、レオンがいぶかる。
「ルガモンに教わったんだ。ご主人様が帰ってきたら、子分はそうやって迎えるんだって」
「やれやれ……。パルスモンは、ぼくの子分じゃないよ」
セキュリティ、空調、水回り、家電、マンションのすべてのシステムはネットワークで集中管理されている。
レオンは、いわゆるAIアシスタント、スマートスピーカーとしてもデジモンを利用していた。
「パルスモン、調べて。キーワードは……」
「WWW-626便の乗客名簿だね」
リビングの壁の大型モニタにデータが表示された。
付きあいが長いと、デジモンはパートナーの考えていることまで察するようになる。
これをAIの学習効果というのか、デジモンのくせに気が利くやつ……というのかは議論がわかれるところだ。
「…………」
「いいのかい? この事件はきみにとって……」
レオンは荷物を置くと、薬局でもらってきた袋の中身をテーブルのトレイにぶちまけた。
ボトルの水で、カプセルと錠剤をのどに流しこむ。
「ああ、トラウマだ」レオンは自問した。「でも、むきあわなくてはならない。過去の、未熟だった無力な自分と……乗客名簿を検索」
「検索……HIT2件。日本人……記録を照合、永住夫妻で間違いない。エイジの両親だ」
あのとき――
ハイスクール時代。レオンは駆けだしのハッカーとして、パルスモンとマインドリンクを果たした。そして……。
「ぼくにはエイジに、とやかくいう資格なんかなかったんだ」
――救えなかった。
未熟だった自分には、どうあがいてもWWW-626便の墜落を防ぐことはできなかった。できなかったとしてもだ。
「でも、エイジにはクラッカーをやめてほしい。正しくないからだ。たとえエイジに嫌われても」
言葉では迷いながら、結論はゆるがなかった。
自分の〝正義〟に殉じる。それが無法を許さぬハッカーにとっての人生だから。
迷わずに、生きる。
「レオン」パルスモンが言った。「ルガモンと戦うの?」
「エイジがクラッカーをやめないのなら、ね」
「そっかぁ……」
「ぼくらは、もうSoCにケンカを売ってしまった。むこうがほうってはおかないさ。ハッカーとクラッカーは、ネットで……デジタルワールドで決着をつけなくちゃならない」
となりにある郵便局のまえで、近所の奥様たちがたむろして話す声で、エイジは目を覚ました。
「んー」
ロフトで布団にくるまったまま、デジモンリンカーで時間を確かめる。
「起きたか、エイジ」
「おはよ、ルガモン。なんかメッセージとかあった?」
ルガモンは……ロフトにはいない。下にいるようだ。
「そんなの自分でチェックしろ」
「はいはい」
エイジは寝転がったままスマホを手にした。
GriMMのトピックをチェック。
毎日、いろいろ送られてくるショートメッセージを確認する。
「マーヴィンからお礼ギフトきてんな。まめな人だな……なんか、おかえししなきゃ」
「表のアカウントにモカちゃんからメッセージきてんぞ」
「モカちゃん? だれ」
「DDLの受付」
初音……モカ。
「バーカ、それはやく言えよ。こっちに転送しといて……」
「恋人が浮気してるっぽいから、クラッカーのエイジなら、彼氏のアカウントをこっそりクラッキングできるかな……だと」
ルガモンは、わざわざ初音の下手な声マネをして内容をしゃべった。
「…………。それは転送しなくていいや」
彼氏いたのかよ、そりゃいるよな……エイジは朝からテンションがダダ下がりだ。
だいたいクラッカーをなんだと思っているのだ。他人のアカウントをクラッキングしたら立派な犯罪者だ。リスクに対してメリットがまったくない。
「これさ、モカっちはエイジを信頼してるってことだろ?」
ルガモンはこだわった。
「お?」
「それでモカっちの彼氏が浮気してたら、あっちはわかれるじゃん? そしたらモカっちは、おひとり様だろ」
「ルガモン、おまえ……デジモンのくせに」
人間関係に興味があるのか。エイジはびっくりした。
「あと、重要メールきてんぞ。チャンネルSoCの管理者からだ」
「へー、なんだろ」
「なんか緊急の用らしい」
「…………」エイジはわれに返った。「って、SoCの管理者っていったら」
「例のリーダーだろ。タルタルソースみたいなやつ」
「それを最初の最初に言え……! というか夜中でもなんでも、たたき起こせ!」
「なんでおまえがキレるんだよ」
「ったく……!」
エイジは急いでメールボックスをタップした。
――SoCのリーダー、タルタロスだ。
「マジか……本物」
チャンネルの管理者から来ているから、本人だ。偽メールを疑う余地はない。
――クラッカー・エイジ。X国での作戦における、きみの活躍はすばらしかった。マーヴィンのことは心から感謝する。きみのような有能なクラッカーが、SoCに参加してくれたことはよろこびだ。さて、きみをA級クラッカーと見こんで依頼がある。
ついに……! SoCのリーダーからのアプローチだ。
エイジはメールを読みすすめた。
――X国での作戦はハッカーによって妨害されて失敗した。貴重な国家機密級デジモンをロストする結果となった。
そうだ、ハッカー・ジャッジだ。
報復として、あのハッカーの鼻を明かすことはできるだろうか。
SoCはクラックチームとしての看板を背負っている。
方法は一任する。ジャッジの名声を、へし折れればいい。
「ガチな話になってきたな……」
ハッカー・ジャッジを放置すれば、SoCの沽券(こけん)にかかわる。
シメシがつかない。今後、ずっと負け犬の汚名を着せられることになるだう。
無法のアンダーグラウンド――デジタルワールドをシノギにしている以上、ナメられるわけにはいかないのが裏稼業のつらいところだ。
タルタロスとしては、エイジのSoCへの忠誠心を試す意味もあるのだろう。
踏み絵だ。
ここで依頼を断れば、それまでだ。タルタロスは疑い、エイジと距離をとるだろう。
「よし……! レオンに勝てば、タルタロスはおれを認める」
シンプルに最短距離で。
エイジの目的は、龍泉寺教授の依頼をやり遂げることだ。
「レオンと戦うのか?」
「ああ、そうだ」
「エイジは、レオンが嫌いなのか? トモダチってやつなんだろ」
ルガモンはふしぎそうだ。
「デジモンは……たとえば、だれか協力したりしないのか? おまえと9番街のデジモンたちは仲間みたいなもんだろ」
「子分だ」
「じゃあ……その子分同士は仲間だろ?」
「ウォールスラムで生き延びるために協力してるだけだ。そのほうが生存効率が上がるから」
といわれてしまうと……それは、確かに友達という感じではないのか。
常に生存競争にさらされる、たとえば野生動物なんかには、ボスや群れ、血縁関係の絆はあっても、友達みたいな関係はなじまないのかもしれない。
「友達っていうのは……なんだろ。いろいろあるけど、いっしょにいて楽しいっていうのは当然として……おれが思うのは、そいつのために自分が、なにかをしてやりたいと思えるやつだ。ちょっとくらい自分が損してもだ」
「損!? 損はしたくねぇぞ」
「まぁ、そうだろ。それは他人ならそうだ」
「友達って……なんか、思ってたよりハードモードだな……!」
ルガモンは考えこんでしまった。
「いまのおれが、レオンにしてやれることなんか……」
なにもない。
ゴロンと横をむく。
壁と天井に圧迫されるロフトは棺桶みたいで。
レオンは、なんでも持っている。
嫉妬していたのはエイジもなのだろうか……。
そういう自分は嫌いだったので、エイジは考えるのをやめた。
「――そっか、パルスモンと戦うのか」
「究極体カヅチモンだな。……嫌なのか? ルガモンは」
横になったまま声だけでたずねる。
「んなわけねーだろ! あの静電気野郎、さんざん下に見られたし、つぎ会ったら、けちょんけちょんにして勝ちたいって気持ちでいっぱいだ!」
「だよな! おれも……勝ちたい。レオンには負けられない」
クラッカーとして積み重ねてきた。
その龍泉寺教授との仕事も縁も、なにもかもレオンが奪おうというなら。
レオンが、エイジの人生に、ハッカーの正義感だけでかかわろうというなら。
そのことより大切で重くて、ゆずれないことなど、いまのエイジにはない。
(高校の卒業式にも出なかった。どんな顔していいかわからなかったからだ。実家を追い払われたときのことは忘れられねぇ……)
二度と、あんなみじめな思いはごめんだ。
「おれが進化して! パルスモンを、カヅチモンをやっつけたら……」
「おう、その気合いだ」
エイジはロフトから顔を出して、下を見た。
「……やっつけたら、どうするんだろうな?」
ルガモンは……首をひねった。
「なんだ、それ」
「わかんねーよ。こういう感じになったこと、ねーし」
「デジモンの心は乙女心よりフクザツだな。あ……もしかして、びびってんのか」
「…………! つぎにそれを言ったら、二度とマインドリンクしてやらねぇからな!」
たがいのデジモン同士の戦いで――
クラッカーとハッカーは、ネットワークで決着をつけなくてはならない。
もちろんレオン本人に危害を加えるわけではない。そんなのは、ただの殺し屋だ。
折るのはレオンのプライド、ハッカーの〝正義〟だ。
「――そういえばルガモン、DDLのカフェでパルスモンになにかもらってたな? なんだったんだ、あのプレゼント」
エイジは昨日のことを思いだした。
「開けてねーよ。やべー爆弾とか入ってたら、やだろ」
ルガモンがデータをホロライズした。ボックスは開封せず、そのままだ。
「ハッカーからのプレゼントとか、まぁ開けないよな」
エイジは苦笑いだ。コンピューターウィルスが仕こまれているかもしれない。
「で、どう勝つんだ、エイジ」
「いまのおれたちじゃ、レオンとカヅチモンには勝てない。勝てないけど……勝つまで進化だ!」
「強くなるのは、いいな!」
ルガモンは自分が強くなることについてはポジティヴになる。
「レオン……おれは、やるぞ。だれかをうらやむだけの人生なんかごめんだ。おれは……おれとルガモンで、クラッカーとして勝つ! ハッカーのおまえを、へし折る!」
龍泉寺の信頼を勝ち取る。
教授の教え子であるレオンを押しのけてでも。その先に人生の成功があるからだ。
エイジは作戦を考え、ルガモンと話を詰めた。
リーダー・タルタロスの依頼どおり、レオンの鼻を明かす方法は――
キャラクターデザイン・挿絵イラストレーター:malo