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ソレハ進化ヲ ハ ズ レ シ モ ノ
進化のかがやきのあと、ルガルモンだったソレは、黒くぬめったナニかのカタマリと化した。
脚のない、蛇のように。
脚だらけの蟲のように。
うごめき地をはいずると、異様なすばやさで、ソレはケダモノのカタチをなして敵に襲いかかった。
瞬く間に距離をつめてカヅチモンの喉笛に食らいつく。
ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
対の雷刀を振りあげたまま、カヅチモンは技の構えを解かざるを得なかった。
食らいついたソレを強引にひきはがそうとする。
だがその黒い牙は、カヅチモンの太い首筋にかじりついてはなれない。
エイジの意識は、とつぜん情報をシャットアウトされた。
沈黙のデジコア。
(なんだっ……!?)
変だ。
仮想モニタがブルースクリーン――エラー修復モードになってしまっていた。
デジモンの視座では、こちらがカヅチモンの首に食らいついていることだけはわかった。
なのに――エイジは相棒を、パートナーデジモンを認識できない。
コマンドを打ちこむ。
だが、返ってこない。
(コマンドが通らない……!? ツールがオチてる……おいルガルモン! いや……進化したのか? なら……おい! おまえは……)
エイジの相棒は、いったいナニになったと…………。
――?????????????????????????????????????????????????????????????????????
意味不明な、耳障りなだけの音が返った。
エイジはブルースクリーンの仮想モニタをたたく。エラーが繰りかえされたが、最低限の情報だけは拾うことができた。
(完全体……! 魔獣型 ウィルス種……)
やはりエイジの相棒は、いま完全体になっている。少なくともパラメータ上は。
進化は成功した。
エイジは名前もわからない相棒のデジモンに呼びかけ続ける。
返事は……ない。
リアクションがない。返ってくるのは意味不明な、獣のうめき声じみたノイズばかりだ。
(進化した……完全体になったはずだ……!)
勝つ。
勝つために。
しかし、これは――
――失敗……暴走か。
声が聞こえた。
カヅチモン――レオンの声だった。
「きみの進化は失敗した、エイジ……! 暴走だ」
レオンの言葉に、意識だけのエイジはさぁっと血の気がひく感じがした。
「失敗……暴走……?」
デジモンは進化によって、攻撃力、耐久力、スピード、感知能力――AIとしてのスペック、処理速度を大幅にアップグレードできる。
だが時として進化のさい、なんらかの要因によってエラーが生じることがある。
昆虫が蛹から羽化に失敗するように。エビやカニなどの甲殻類にとって、脱皮のときがもっとも危険であるように。
その結果、進化したデジモンが暴走してしまうことがあるのだ。
ブルースクリーンに、いきなり大量の文字列がはき出された。
エラーコード。
あふれ出す意味をなさない文字列は、とどめようもない。
「――いや、デジモンの進化それ自体に成否はない。これは先生も言っていたけど……正しい進化も、間違った進化もないからだ。だから失敗というのは取り消す……ただ……エイジ、きみのデジモンはコントロール不能だ」
ノイズまじりのレオンの声が、かろうじて聞こえた。
デジモンが気絶、停止したわけではないのでセンサーは生きている。
ただ、マインドリンクしているのに、エイジとパートナーデジモンとのあいだで、ツールでも言葉でもコミュニケーションがとれないのだ。
「強引な進化で、墓穴を掘ったね……エイジ」
「おれとルガルモンの進化が、強引……?」
エイジはショックを受けた。
レオンは続けた。
「マインドリンクによって、ぼくらハッカーやクラッカーは、デジモンの進化を意図して促すことができる。でも……それは諸刃の剣だ。進化のさい、デジモンはパートナーである人間の意識の影響を強く受けることになる」
「そうだ……だから! おれはルガルモンと勝つために!」
どうして。
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ…………なぜだ。
「エイジ……きみが認めようが認めまいが……見ろ! この暴走した、異形なる完全体は――」
――ヘルガルモン 完全体 魔獣型 ウィルス種
カヅチモンによるサーチ結果には「ML」、そして「暴走」の警告注記がされていた。
ソレの名は、完全体ヘルガルモン。
エイジの意識に、相棒――パートナーデジモンの、おぞましい姿のイメージが強制的に焼きつけられた。
獄炎の魔狼。
上半身をもたげ、腕部はよりたくましくなり、ルガルモンよりも2足歩行に近いスタイルだ。
だが、そのボディは――骨だ。
カヅチモンに食らいついているのは黒い骨だけの顎門。するどく巨大な黒い爪が骨から直接伸びている。
上半身は、肉のかわりにすべてが魔炎につつまれ、下半身は黒いベルトが包帯のように巻かれていた。もふもふの尻尾は骨ばかりとなり、炎の鞭のようにしなっている、
(完全体ヘルガルモン……!)
神喰らいの魔狼、その完全なる姿だ。
ラグナロクで主神オーディンを殺すと預言された、神話のフェンリル狼がいたとすれば、それは、このような姿かもしれない。
なぜ、なぜ、なぜ…………。
理由は、さっきレオンが言ったとおりだ。エイジは認めるしかなかった。
(おれのせいなのか…………!?)
勝つ。
勝つために。
たとえレオンを踏み台にしてでも、勝ちだけを、そのためのチカラを求めた。
エイジは願ったのだ。
結果が、これだ。
この暴走するヘルガルモンは他者を、相棒を、自分を――大切ななにもかもを犠牲にして勝つだろう。
すべてを蹂躙し喰らい踏みにじるはずだ。
ヘルガルモンはカヅチモンへの攻撃をやめない。
喉笛に喰らいついて、はなさない。
(ルガルモン……ルガモン! 相棒! 戻れ……戻れ! 戻ってこい!)
エイジは叫び続ける。
コマンドは返らない。
相棒のデジコアのなかで、エイジ自身が無意味な――ノイズになってしまっていた。
カヅチモンに攻撃を受けながら、レオンは仮想モニタでデータを解析する。
「――このヘルガルモンはウィルス種だ。ウィルス種の本能ともいうべきは、浸食と破壊……」
暴走したウィルス種デジモンは、手あたりしだいにデータを破壊する。
自分がほろびるまで、だれかを喰らうのだ。
「だが……解せない。この究極体カヅチモンが、なぜ完全体ごときに?」
これがエイジのパートナーデジモンの潜在能力、ポテンシャルなのか……!
レオンの声に、初めてあせりの色がまざった。
アラートが鳴る。
「カヅチモン? どうした……はっ!」
気づいた。
Kライン。
警告基準値。マインドリンク持続時間、その限界がせまっていた。
「――墓穴を掘ったのは、おまえもだ……レオン」
エイジはチカラのない声で言った。
「ねらっていたのか、タイムリミットを……」
龍泉寺教授が定めた指標――K(警告)ライン、そしてL(限界)ライン。
マインドリンクの重大リスクだ。
それを承知で、結局はそのリスクを求めなければリワード――報酬は得られない。
真のハッカーも真のクラッカーも、そもそもデジタルワールドに安心など、ハナから求めてはいない。安心を要求するやつはカモになるだけだ。
まさに、その命と時間を。
人生をかけている。
デジタルワールドで、それぞれにとって大切な、なにかを手にするために。
「レオン……! おまえがどんなスゴ腕ハッカーでも、究極体で大技連発……その上、この電磁結界まで維持してるんじゃな」
究極体ともなれば、マインドリンク状態でまともに活動できる時間は極めて限られるはずだ。大技を使うことでも持続時間は減少する。
「…………」
「おまえをKラインまで追いこんで、初めて互角にもっていけると思った。そこでルガルモンが完全体に進化すれば……でも、暴走か……そうか……」
「エイジ」
「ごめんな……おまえをこんな姿にしちまったのは、おれのせいだ……」
レオンを踏み台にしてでも勝つ。
龍泉寺教授に、レオンよりも認めてもらう。
結局、なにも持っていない人間が、まともに生きるには夢なり目標がいる。
それが許される〝自由〟の宿り木に居場所がほしい。
もう生きることに追われたくはない。明日が見えない人生には戻りたくない。
同情も、手助けも、なにもいらない。
ひとりで……クラッカーとして。
エイジはレオンをうらやみ、いなくなればいいと思った。無意識に……でも気づいてもいた。
嫉妬の炎で身を焦がし、不安の牙で肉をえぐり、犠牲の返り血を浴びて歓喜する。
鏡に映った自分を見た。
エイジの願いは……叶うだろう。
暴走したヘルガルモンによって。認めようが、認めまいが。たとえ望まぬ結果をもたらそうとも。
「せっかく、あのハッカー・ジャッジを時間切れに追いこんだのに。ごめんな相棒……」
このヘルガルモンの破壊力だけは本物だった。こうして究極体であるカヅチモンですら、持て余している。
相棒のデジモンを、こんな姿にしてしまった。
せめて勝ちだけはもぎ取らなくては。エイジは、ほんとうになにもかも失ってしまう……。
でも――
エイジは、もう戦う意思が失せていたのだ。
「しっかりしろ、エイジ! パートナーの暴走をとめられるのも、きみの意思だけだ!」
レオンが活を入れた。
「やってるよ! やってるけど……」
エラーをはき出し続けるデジコアのなかで、エイジは、なんとかしてヘルガルモンとの接触を取りもどそうとする。
――command not found
「――でも、聞こえないんだ……! 相棒の声……デジモンの声が!」
「ぐうっ!」
レオンがうなった。
カヅチモンが、パワーだけで押し倒された。
サイズだけならヘルガルモンのほうがデカい。そして、究極体のデジコアにひびくほどのダメージを与えている。
「逃げろ、レオン……逃げてくれ! もう、時間がないんだろ!」
戦意を失い、エイジはなすすべなく叫ぶだけだ。
レオンは、しかし、
「どうなろうと……きみがクラッカーをやめると誓うまで、ぼくは戦う! そして、どうあろうと……エイジ、きみを救う!」
「んなっ……」
理解できない。
なぜレオンが、そこまでエイジにかかわる。エイジがクラッカーをやめることにこだわる。
確かに親友だった。
でも小学生のときだ。X国のデータサーバで再会するまで、おたがい何年も忘れていたはずだ。いま、ふたりが生きているリアルの環境は、あまりにもかけはなれた。
龍泉寺教授がいなかったら、デジタルワールドとデジモンがなければ、エイジとレオンは、その後の人生でまじわることさえなかったはずだ。
「なんで」エイジは問う。「なんで、そこまで」
「…………」
「理由があるだろっ……!」
ほんとうに龍泉寺教授の名誉を守るためだけなら。
エイジにクラッカーをやめさせる必要などない。ハッカーとして、クラッカーをたたきつぶせばいいだけだ。排除すればいいだけだ。エイジがいなくなれば……。
「WWW-626便」
レオンが言った。
亡くなったエイジの両親が、最期に乗った飛行機だ。
「…………?」
「あの事件には裏があった。世界を揺るがすほどの。そう、あれは……」
ブチィィィッ……!
カヅチモンは強引に、食らいついたヘルガルモンを引きはがすと巴投げでぶん投げた。
ヘルガルモンは〝士道一徹〟の結界壁に激突する。
バヂバヂバヂバヂバヂ……!
自分の肉が焦げた臭い。
エイジの意識が一瞬飛びかける。ヘルガルモンは電磁結界に灼かれて、はじかれて地面をのたうちまわった。
その姿は……あらためて見れば、狼のようで狼ではなかった。
獣の頭蓋骨をかぶせられて全身を罪の炎で炙られる――人間のできそこない。
エイジとおなじ瞳をした。
「――再起動……いや、リカバリをかけるしかない」
エイジはツールの復旧をあきらめ、最後の手段にかける。
進化の結果、暴走したのであれば……いちばん安定していた成長期まで巻きもどす。ダウングレード、逆進化させるしかない。
ブルースクリーンから、直にコマンドを打つ。
「かえってこい……かえってこいルガモン!」
コマンドを送り続けて、語りかけた。
暴走したデジモンとマインドリンクしている状態は、危険という意味ではKラインを超えた状態と大差ないだろう。
カヅチモンは深い傷を負いながら、無言で立ちあがった。
はがれたテクスチャがノイズの血となって、ボタボタと流れ落ちている。
「WWW-626便事故の原因はデジモンだった。裏でテロを支援していたのはあのX国、実行にあたったのがムゲンドラモンだ」
レオンが言った。
「あのムゲンドラモンが……!?」
WWW-626便の失踪と墜落は原因不明のままだが、デジモン犯罪がらみだったらしいことは、エイジもクラッカーになってから知った。
知ってはいたが――具体的な撃墜犯についての情報は、初耳だ。
もし、それがほんとうなら。
知っていたら、X国データサーバでエイジはどうしただろう。
デジモンはツール、道具だと割りきって、仕事を優先してムゲンドラモンを回収しただろうか……。エイジの人生を壊したデジモンを。
「ぼくがエイジのご両親の死を知ったのは、このまえラボで会って話を聞いたときだ。626便の乗客名簿まで、つぶさには見ていなかったから、知らなかった……ごめん」
レオンは謝罪した。
その謝罪の意味が、エイジにはわからない。
「なんで、おまえが謝る?」
「WWW-626便が失踪したとき、ネットワーク上では、テロの実行犯であるクラックチームと、それを防ごうとする米軍サイバー特殊部隊による、626便をめぐる戦闘が行われていた」
「…………? まじか」
日本の警視庁にデジ対があるように、米軍にもデジモン部隊があるのは確かだ。
「あの事故……いいやテロ事件は、ぼくにとって痛恨事だった。思いかえすのもつらい記憶だ。でも、けっして忘れてはならない、乗り越えなくてはならない記憶……! そう、ぼくは……あの事故の現場、サイバーテロの場にいた。ハッカーとして」
ハイスクール時代。
テロリストと、それを防ごうとする警察やハッカーとの、デジモンによるサイバー戦闘。
戦場。
ようやく独力でマインドリンクに成功したばかりのレオンは、そこでは……無力だった。
スゴ腕のクラッカーひとりひとりにすら歯が立たない。
米軍の防衛線を突破して、テロリストたちは目的を達した。
結末だけは、みな知っている。
WWW-626便は洋上で失踪、墜落、乗客乗員は全員死亡。
「――ぼくは守れなかった。きみのご両親も……救えたかもしれないのに」
レオンは無力な傍観者として敗北し、数百の乗客の死を見守っただけだった。
X国のクラッカーの目的は……?
テロリストにとって、航空機を墜落させることは目的ではなく手段だ。
悪意のクラッカーは自分たちのサイバー戦闘力を誇示し、スポンサーであるX国は外交のおどしの道具にする。
数百人の乗客は、彼らの人生とは関係ない、それっぽっちのことで命を落とした。
デジタルワールドとデジモンのことなど知らないまま。
「…………!」
「いまのぼくなら救えたのに。だからぼくには……エイジ、きみをさとす資格なんか、ほんとうはないんだ」
「なんで、だからって、なんで……」
「友達だったから。いちばんの」
レオンは、真っすぐだ。
ウソはつかないやつだ……。
「…………! おれの両親が死んだのは、おまえのせいじゃねぇぞ! X国の独裁者ヤローと実行犯のクラッカーのせいだ!」
エイジの考えは変わらない。であれば、ここでレオンを責めるわけがない。
なぜレオンが、エイジの両親の死を背負う。
「それがネットワークの〝正義〟をかかげるハッカーの……責任だからだ」
「…………!」
「このままクラッカーを続ければ、きみは、いつか626便のような事件に巻きこまれる。もしかするとテロを引き起こしてしまうかもしれない」
「ならない! クラッカーをひとくくりにするな!」
「そうかな……? きみはすでに、SoCによるX国へのサイバーテロに加担したじゃないか。そして、こうして自分のデジモンを暴走させている」
そのつもりはなくても、どこかでかかわり、どこかで事故は起きる。
エイジは、もう……反論できなかった。
「エイジのような……デジモン犯罪の不幸の連鎖を断つこと。それが、ぼくがハッカーになった理由だ。
〝正義〟だ。
ぼくの存在する……エイジっぽくいえば、ぼくの人生さ。だからクラッカーのきみに負けるわけにはいかない。そして、ぼくはきみを救ってみせる」
カヅチモンが、ふたたび対の雷刀をかかげる。
「!」
「確かにKラインを超えた。でも、あと一撃ぶんの時間くらい削りだせる……〝士道一徹〟を解除だ、カヅチモン! 暴走したヘルガルモンをとめる! そのあとでエイジ……きみを回収してリアルワールドへ戻る」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
轟音がとどろき、さらに反響し、聴覚をめちゃくちゃにした。
振動と衝撃が全方位から襲いかかる。
「ぐぉおお!? キッツイ! なんだ……!?」
エイジは耐えられなくなった。
耳もとで寺の鐘を突かれたとか、そんな程度ではない。粗大ゴミの破砕機とか、自動車をスクラップにする油圧プレス機とか、そういうのに生きたままほうりこまれている感じだ。
「なんだ…………なっ!?」
レオンは虚を突かれた。
〝士道一徹〟の電磁結界が――
「まさか……カヅチモンの結界が!?」
レオンが声を裏がえした。
あれほど強固な〝士道一徹〟の電磁結界に亀裂が生じた、直後――
バリバリバリッ!
結界は、薄氷のごとく砕かれた。
レオンが結界を解除したのではない。外部から破壊され、圧壊した。
チカラによって。
ソコには穴があった。
〝タービュランス〟――――
漏斗状になったワイヤーフレームの落とし穴は、宇宙空間のブラックホールを思わせる。
エイジは――
レオンもまた、カヅチモンの電磁結界のなかにいたので気がつかなかった。
ふたりはいつの間にか〝巣〟で発生した〝乱渦〟の上にいたのだ。
――〝乱渦〟には、ぜったいに近づくな。
マーヴィンの言葉が思いだされた。
この〝乱渦〟のサイズは……比べるものがないのでスケール感がつかめないが、野球とかサッカーのスタジアムほどはあるだろう。
〝乱渦〟そのものは見えない。
まわりのデータをすいこんでいるので〝穴〟として見える。ノイズの浮島をすいこみつつ、ゆっくりと回転しながら移動していた。
――ヤバいやつが出てくる。
〝深層〟から。
顕現せしは守護スルモノ。
――究極体 聖騎士型 ワクチン種
デジタルワールドの聖騎士、守護神、世界樹の13使徒。
その異称は、さまざまだ。
姿は、翼こそないものの武装した天使を思わせる――ヒトガタ。
右腕の〝ガルルキャノン〟は星をも凍えさせる絶対零度の砲。
左腕の剣〝グレイソード〟は絶後無敵、その刀身にはデジタルワールドのシステム言語でコードが刻まれていた。
――〝All Delete〟
〝すべてを消去する〟と。
――ロイヤルナイツ オメガモン!!
キャラクターデザイン・挿絵イラストレーター:malo