DIGIMON 25th PROJECT DIGIMONSEEKERS

-NOVEL-

CHAPTER1
Eiji:Wolf of ninth avenue

Chap.1-17

 よりしなやかに、つよく、するどく。

 獲物を狩るためだけ、食らうためだけに〝チカラ〟をもとめたフォルムへと。
 ウォールスラムの9番街には、おそるべき狼が棲むという。
「ルガルモンだと……まさか、このデジモンは……!」
 たおれたサツキは、声をうしなった。

 九狼城の廟の瓦屋根に降り立ったのは、はるかに成長した、魔炎をまとった蒼き狼。

 膨大なエネルギーが観測された。
 あらわれた成熟期デジモンの内からあふれだしたエネルギーが、その口もとから炎となって噴きだしている。
「そうだ、おれはルガモンであり……おれは〝ルガルモン〟!」
 エイジのデジモンは、その身にやどした魔炎の記憶を思いだす。
「ルガモン……いや、ルガルモン……?」エイジは内から語りかけた。「思いだしたのか、おまえ!」
「〝九狼城の魔狼〟……! 聞いたことがある。たしか、このウォールスラム9番街のボス格だったデジモンか!」
 サツキは歯をかみしめた。
 ルガルモンの口内で魔力と炎が収束する。
 一閃。

 〝ハウリングバーナー〟!

 圧縮された高熱の炎が撃ちだされた。
 粘液などでは防ぎきれない。直撃をうけたヌメモンは身をくねらせて、のたうちまわった。
「ぐっ!」サツキが悲鳴をあげた。「ヌ……ヌメモン! あたしのヌメモンがぁ……!」
 パートナーのデジモンが、デジコアにひびくほどの大ダメージをうけた場合、マインドリンクした人間の精神データも無傷ではいられない。デジモンへのダメージは痛み、ストレスのシグナルとなって意識におそいかかる。
 ヌメモンは消えない炎に焼かれつづける。
 さっきとは火力がちがった。成長期の炎が焚き火だというなら、これは鉄をも焼き切る巨大バーナーだ。

 ヌメモン、ダメージ大!
 撤収命令が出ました! 負傷者を回収!

 たおれた指揮官を見て、デジ対の隊員たちは即時に動いた。
 カーゴドラモンのローターの風圧でヌメモンを強制消火、機内に回収すると、コマンドラモン分隊ともどもデジ対は撤退していった。

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 カーゴドラモンの機上。

「よくも、あたしのヌメモンを……!」
 サツキは、ひどい火傷を負った彼女のヌメモンをいたわりながら、ギリギリと歯ぎしりをした。
「副班長! 警告基準値をオーバーします! いそいでマインドリンクの解除を!」
「いやだ」
 ホロライズしたサツキは、チャットで部下の言葉をつっぱねた。
「しかし……!」
「あたしのヌメモンをこんなにされたんだ。ゆるさないよクラッカー……つぎは、かならず……」
 カーゴドラモンは、ティルトローターエンジンを水平方向にもどすと、全速力でネットワークの海を上昇していく。
 眼下となったウォールスラム9番街を見おろしながら、サツキはほえた。
「クラッカー・エイジ! かならず逮捕してやる!」

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 撤退し、ネットワークの海の彼方に見えなくなったカーゴドラモンを見送ると、エイジは、ふたたびホロライズして彼のデジモンのかたわらに立った。

 ルガルモン。

 外見はおおむね狼のままで、毛なみの色も、ルガモンがおおきくなったという印象ではある。
 ただ全身の毛がながくなって魔物感をましていた。
 最大のちがいはサイズルガルモンは、リアルの動物でいえばサイくらいはあるだろう。おでこのインターフェイスはそのままのこっていた。
 廟の屋根瓦に立ったルガルモンは、九狼城のせまい空をあおぐ。
「成熟期に進化して……進化しなおして、やっと思いだしてきたことがある。このウォールスラム9番街は、おれのナワバリだった」
「〝九狼城の魔狼〟……だっけ? おまえ、ここのボスだったってことか。大物じゃん!」
 エイジはすなおにもちあげた。
「どうだかな……結局、ボスではなくなったということだろう」
 だれかに負けてボスの座をおわれたのか。それとも、みずから去ったのか。それは思いだせないという。
「進化するごとに思いだすとか、おまえ、かわった記憶喪失の仕方するんだな。まぁ、記憶喪失とかマンガとか映画でしか知らないけどさ」
「ふん……まぁ、いいさ。おいおいとりもどす……〝チカラ〟も〝キオク〟も、おれの進化のすべてを」
 ルガルモンは未だに、さらなる進化の予感を秘めているのか……。
 くすぶっていた魔炎がようやく鎮火して、やっと9番街に、もとの静寂がもどった。

 ガサッ……

 物音がして、路地の奥からだれかがあらわれる。
 デジモンだ。
 ひとり、ふたりではなかった。わらわらと……これほどの数がどこにかくれていたのか、ウォールスラムのデジモンたちが九狼城の広場にあつまってきたのだ。
「え……? なに、これ」
 エイジはびっくりした。
 ウォールスラムはやるかやられるか。まさか、つぎはこのデジモンたちがおそってくるのか……?
 ルガルモンは、だが……悠然と広場にあつまってきたデジモンたちをむかえた。

 ルガルモン!

 声があがる。
 その声はやがて、数十、数百のデジモンの声となって九狼城にひびきわたった。

 ルガルモン! ルガルモン! ルガルモン!

ルガルモン novel_deco

 九狼城にあつまったデジモンたちが、彼らのボスの帰還を祝った。
 そのようすを、魔窟のビルの屋上から、ボロ布をまとったデジモンがひそかに見おろしていた。

「〝九狼城の魔狼〟は帰還した」
 ボロ布のデジモンがいった。
なかなか胸にくる光景だな」
 ボイスチャットで、だれかがつぶやきかえす。SoCの面接官の声だ。
「意地がわるいな、おまえは。彼らのテストのために警察にタレこむなんて」
「デジ対の副班長をものともしなかったか。マインドリンカーを警らによこすとは思っていなかったが、結果は期待どおり。ルガルモン……あの〝プロトタイプデジモン〟は」
「あのクラッカーのコは?」
「判断保留」
「ふぅん……マッピングの仕事は、どうやらコンプリートしたみたいだよ」
 彼らにわたしたマッピングツールからのデータは、すでに受信済だ。
「もちろんSoCへの入隊は合格だ。マインドリンク可能なクラッカーは、のどから手がでるほどほしい」
「導けると思う? あのクラッカーのコ……ナガスミ・エイジは。彼のパートナーデジモンを……さらなる〝深層〟へ」
「なってもらわねば。そこが、われわれの約束の場所であるからには。そうだろう〝ドルモン〟」

ドルモン

 ぶわっ

 ボロ布が、そのとき、つよい風にはがされた。

 ドルモン 成長期 獣型 データ種

 ふさふさの尻尾。
 ボロ布の下からあらわれたデジモンは、地味な色で、一見するとリスなどの小動物を思わせる姿をしていた。
 しかし、そのデジコアには神話から語りつがれてきた幻獣〝ドラゴン〟のデータがやどされているという。
 証は、背中に生えたちいさな竜の翼

 ドルモンのひたいには、ルガモンとおなじインターフェイスがかがやいていた。

キャラクターデザイン・挿絵イラストレーター:malo

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